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  第16話 オアハカ



第17話  ユカタン半島〜深き緑のジャングルの道



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 オアハカから僕はバスを乗り継ぎ、進路をメリダへと転じた。

 メキシコ湾に突き出したユカタン半島の中心都市メリダ。山地から海沿いの低地にやって来て、雨が多い。泊まったユースホステルでは、なぜかドイツ人たちが夕方のスコールに歓喜し、上半身裸で中庭に飛び出し、雨に打たれてはしゃいでいた。

 メキシコ合衆国
(United Mexican States)

メキシコ地図

 メリダから再び自転車に乗った僕は、天候状態を気にかけながら走った。鬱蒼とした深い緑に囲まれた道。暑さはさほど気にはならなかったが、湿度が高く、汗が止まらない。

 日本では灰色の空が一面を覆い、しとしと一日続くような雨が降る。しかしメキシコの雨は違った。空を見れば、どこに雨雲があるか分かる。そしてその雲が今現在雨を降らせているのかも分かる。雨を降らせている雲は、絵の具を刷毛でなぞったようにぼやけて見える。激しい雷雨の場合は、稲光だってはっきりと見える。自分のいる場所はたとえカンカンに晴れていたとしても、前方にそんな黒雲が見えると、気分はすっかりへこむのだ。

 旅をしている間、洗濯は基本的に手洗いだ。宿に泊まる場合は宿で干せばいいが、自転車に乗っている間は、走る自転車がそのまま物干竿になる。Tシャツやパンツはサイドバッグやザックに括り付け、靴下やタオルはブレーキや変速用のワイヤーに結び付けた。

 運が良ければ数時間で乾く。しかし運が悪いと、雨に降られて振り出しに戻る。パンクし、修理を始めたときにスコールにやられ、周囲に雨宿りできるような場所もなく、全てがずぶ濡れになったこともあった。

 
ユカタン半島の中心都市メリダ
【メキシコ/ユカタン半島の中心都市メリダ】
チチェンイツァ遺跡
【メキシコ/チチェンイツァ遺跡】

チチェンイツァ遺跡
【メキシコ/チチェンイツァ遺跡】
チチェンイツァ遺跡
【メキシコ/チチェンイツァ遺跡】

 九層ピラミッドが有名なチチェン・イツァを観光し、夕方に着いたチェマスという町。広場にいたタクシーの運転手に宿の所在を尋ねると、指差されたのは警察署。裏手に回ると小さな運動場があり、警官たちがバレーボールで汗を流していた。

 敷地内に別棟があり、粗末な倉庫のような建物だったが、その一室を提供してくれた。蚊が多く、翌朝は全身が痒くてたまらなかったが、もちろん文句の言える筋合いではない。僕は礼を述べ、また次の町へと自転車をこぎ出した。

 蟻入りのビスケットを買わされたこともあった。小さな村の売店でビスケットを買い、包み紙を開けたところ、一匹の蟻が這っていた。しょうがないなと思って払い除けると、また一匹這っている。さらに払い落としても、また現れる。さすがに怪訝に思い、ビスケットを割ってみて唖然とした。

 なんとビスケットの中が蟻の巣になっており、何十匹もの蟻の群れが棲みついていたのだ。売店のおばさんに抗議すると、面倒臭そうに新しいものと替えてくれた。

チチェンイツァ遺跡
【メキシコ/チチェンイツァ遺跡】
ユカタン半島の村落
【メキシコ/ユカタン半島の村落】

国際リゾート、カンクン
【メキシコ/国際リゾート、カンクン】
国際リゾート、カンクン
【メキシコ/国際リゾート、カンクン】

*   *   *

 国際リゾートのカンクンを経由し、次に訪れたのはトゥルム。内陸のジャングル地帯で育ったマヤ文明が、成長し拡大し、大海原に達した場所、それがトゥルムだった。遺跡の規模は小さく、学校の校庭くらいの広さで、十分もあればぐるりと歩いて回れてしまう。しかし雰囲気は抜群で、青い海と、椰子の木と、石造りの遺構という組み合わせは、なんとも言えぬ味わいがあった。

 宿も海沿いにあり、椰子の木が生い茂る砂地の中、キャンプ場のバンガローのように、藁葺き屋根をかぶせた小屋が散らばっていた。虫が多いのだろう、小屋の中の各ベッドには蚊帳が付けられていた。僕は唯一明かりのついた受付の脇で、キャンピングコンロで久しぶりの自炊をしつつ、係の兄ちゃんたちと雑談をしながら夜を更かした。

紺碧のカリブ海
【メキシコ/紺碧のカリブ海】
トゥルム遺跡
【メキシコ/トゥルム遺跡】

トゥルム遺跡
【メキシコ/トゥルム遺跡】
カリーリョ・プエルト
【メキシコ/カリーリョ・プエルト】

 トゥルムを過ぎると、風景はいっそうひなびた。国境までは約三百キロ、ジャングルの道沿いに、素朴な田舎の村落が続いた。住民はマヤ系インディヘナの比率が高く、経済発展から取り残されたかのような、カリブ沿岸の湿った空気があった。

 街道沿い、なかなか集落が現れず、手持ちの水がなくなりかけたことがあった。ちょうど自転車に乗っていた子供たちがいたので、付近に村があるのかと思い、飲み物が買えるところがないか訊いてみた。

 僕のスペイン語が通じたのか、彼らはついて来いと、未舗装の小道に僕を案内した。半信半疑でついていったのだが、五分ほどで数軒の粗末な家屋が現れた。どれも藁葺きの住居であり、店らしき看板などどこにもなかったのだが、冷蔵庫があり、さして冷えてはいなかったがコーラを取り出してくれた。

カリブ沿いの閑村
【メキシコ/カリブ沿いの閑村】
メキシコ南東端の町バカラル
【メキシコ/メキシコ南東端の町バカラル】

<出発から6565キロ(40000キロまで、あと33420キロ)>


できごと 距離
2001 05 26 日本 旅立ち 空路アラスカへ
27 アメリカ アンカレジにて自転車購入

0

06 05 フェアバンクス〜デルタジャンクション間

1000

18 ジュノー市内

2000

22 船にてアメリカ本土上陸
07 01 ベア湖〜ローガン間

3000

16 サンタモニカ手前

4000

20 メキシコ 自転車にて入国(ティファナ)
08 05 トゥーラ手前

5000

06 メキシコシティ到着
24 チチェンイツァ先

6000



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第18話 ベリーズ