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パパとママの準備教室 地域の子育て支援が貴重な学びの場に



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 妊娠5カ月の妻とともに安産祈願に行った際、「安産の神様、水天宮を訪ねて」という記事を書いた。お陰様でその後の経過は順調、妻は妊娠8カ月を迎え、雪だるまのような体型になっている。そして先日、私たちの住む自治体で男親を交えた準備教室が開かれるというので、参加した。

 会場は自治体の保健相談所である。受付でチューリップ型の名札を配られる。幼稚園で園児が付けるような名札である。講師を務めるのは助産師や保育士の方たちで、参加は20組40人ほどだった。私たちと同じくらいの30歳代前後の夫婦が多い。女性陣はみな大きなお腹を抱えており、それだけの人数の妊婦が集まっていると圧巻だ。そう、本当は20組60人なのだ!

 最初にNHK番組のビデオを観る。父親の役割について説明したもので、最近の研究成果によると、赤ちゃんは早い段階から男親と女親の違いを認識し、区別しているらしい。母親には安心感を求めるのに対し、父親からは好奇心や刺激を得ようとするのだという。

 次にグループに分かれて沐(もく)浴実習。3キロの重さの赤ちゃん人形を抱いて、お風呂に入れる。こんなものはやっていくうちに慣れるだろうと思いつつ石けんを手にとったりしていると、「もし赤ちゃんが沐浴中にウンチをしちゃったらどうしますか?」と助産師さんからの質問が飛ぶ。さらに、「しますよ。小さなベビーバスならまだいいですけど、一緒に大きなお風呂に入るようになってからも」。畳み掛けるようにそう言われた。

「すくい取る?」「お湯を入れ替える?」「え、どうしたらいいんだろう?」。答えに困っていると、「これといった正解はありません。ただ、そういうことも含めて『どんなことがあるかなあ』と、ご夫婦で考えてみてくださいね」と助産師さんがアドバイスしてくれた。

 正解がないのが正解──。なんだか禅問答のようだが、決まった答えがないのが、子育てなのだろう。

 会場にはまた、妊婦体験ができる7キロの重しも用意されていた。「臨月の頃の重さです」との説明を受けながら、身体の前面に装着する。もっと重たいザックを背負って国内外あちこちに出かけた経験がある身としては、背中とお腹の違いはあるが、ただ立っているだけなら比較的に楽といえる。ただ、座ったりかがんだり寝転がったりする動作は大変だ。ザックと違って、腰をおろすたびに、「どっこらしょ」とお腹の赤ちゃんを取り外すわけにはいかないのだから。

 最後に、先輩パパ・ママとの交流の時間が設けられた。準備教室と並行して育児教室も行われており、そちらには生後半年ほどの赤ちゃんたちも参加している。「抱っこしてみますか?」と言われ、今年の5月に生まれたという女の子を抱かせてもらった。生まれたときは3キロだった体重が7キロとのこと。首は座っているので案外抱きやすいのだが、ずしりと重い。そして、すぐに泣かれてしまった。

 昔のように大家族ではなく、近所との付き合いも希薄になった現代社会では、赤ちゃんと触れ合う機会や同じように出産を迎えた夫婦同士の交流の機会がほとんどない。私自身、半年前に友人に赤ちゃんが生まれ、遊びに行ったときに抱かせてもらったのが、数少ない経験である。だから、このように自治体が機会を提供してくれるのはありがたい。

 地域で子育てを支援する。そういう流れがもっと拡大してくれればと思う。
(2006年12月11日掲載)

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