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新庄、松中、落合監督の涙腺を緩ます地域力

 地方がプロ野球を支え、プロ野球が地方を活性化させる




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 中日ドラゴンズが10日、延長12回の激闘を制し、セリーグ優勝を決めた。12回表に福留が決勝打を放ち、ウッズがとどめの満塁本塁打を放ったあたりから、落合監督の目には光るものがあった。現役時代からどこか飄々(ひょうひょう)として孤高を貫き、オレ流と呼ばれた監督の涙に、多くのファンは驚いたのではないだろうか。

 一方、パリーグでは、北海道日本ハムファイターズと福岡ソフトバンクホークスの最終決戦が11日始まった。

 ソフトバンクと西武のプレーオフ第1ステージ第2戦では、3安打1本塁打の大活躍でお立ち台に上ったソフトバンク4番の松中が、涙に声を詰まらせていた。過去2年、プレーオフで全く打てず、「大一番に弱い」とも言われたが、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で最も多くの安打を放った打者は松中である。世界一の4番が泣いていた。

 4半世紀ぶりの優勝を目指す日本ハムの公式戦最終試合、「札幌ドームを満員にするのが夢」と公言していた新庄の引退式が行われた。ときにゴレンジャーに扮し、ときに襟付きユニフォームで物議を醸し、球団を北の大地に根付かせた男は、静かに泣いていた。

 どうも今年は「涙」の文字がスポーツ新聞の見出しを飾ることが多い。惜しくも優勝を逃した阪神タイガースからも、エース井川と守護神藤川が泣いている。

 涙の理由はそれぞれあるはずだが、共通して言えるのは、彼らを応援するファンの存在であり、かつ球団人気が地域に支えられている点である。福岡ヤフードームで、あるいは名古屋ドームで、遠く離れた地で戦う地元球団を応援し、その活躍に一喜一憂する姿がテレビでも繰り返し放映されていた。

 選手たちもまた「福岡で待っているファンのために」、あるいは「札幌のファンはほんと素晴らしい」と、その都市名を口にする。もはや球団名に地名が冠されているか否かにかかわらず、地方球団と本拠地は不可分のものとなり、プレーオフにおける「名古屋へ!」という言葉が中日への挑戦権を意味しているように、都市名は球団名と同義になりつつある。

 「野球中継でテレビ局の努力を」という記事で、私は地上波放送のあり方について不満を述べたが、最近は地方局が独自に番組を差し替え、地元球団の試合を放送することが増えているという。

 以前、仙台と札幌に住んでいたことがあるが、残念ながら当時は楽天、日ハムが来る前で周囲の多く知人は巨人ファンだった(特に札幌。仙台は過去の縁でロッテファンも少なくなかったが)。今、状況は大きく変わっているだろう。

 札幌は今年、リーグ優勝の暁には優勝パレードをすると上田文雄市長が明らかにしている。また、北海道未来総研によると、プレーオフ進出の経済効果は11.6億円に上る。レギュラーシーズンの経済効果193.6億円と合わせ総額200億円を越え、さっぽろ雪まつりにも匹敵するという。

 札幌が勝つか、福岡が勝つか、はたまた名古屋が最後に笑うのか。都市間決戦の行方に目が離せない。

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