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政治家に「株価」を付けよう!

根付くか電子民主主義〜「ポスダック」日本版の設立シンポに出席した




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 政治家に対する評価を株価に見立て、インターネット上の仮想証券市場で取引する。韓国で生まれた市民による新しい政治参加の仕組み「ポスダック」が日本に上陸した。先月末、都内で催されたポスダックジャパンの設立記念シンポジウムに出席した。

 ポスダックは、実際の国会議員に株価を付けて上場させ、ネット上のサイバーマネーを使って投資できる仕組みだ。政治家の行動や発言によって株価が上下するため、一般市民が、気軽に、いつでも、投資という手法で政治に対し意志表明ができる。

 韓国では現在、50万人が参加する巨大市場に成長し、現実の政治にも少なからず影響を与えているという。

 シンポジウムには、ポスダックの創始者シン・チョルホ氏をはじめ、韓国の政権与党ウリ党の国会議員パク・ウォンウ氏、サイバー研究所所長のミン・キョンベ氏が出席。日本側からは、民主党代表代行の菅直人氏、前志木市長で地方自立政策研究所理事長の穂坂邦夫氏が出席した。司会は、日本版ポスダックの運営会社「アジアの贈り物」社代表の片岡勝氏が務めた。

都内で催されたポスダックジャパン設立記念シンポジウム
【都内で催されたポスダックジャパン設立記念シンポジウム】

 ポスダックの説明から始まり、韓国で成長するに至った経緯、インターネットを使った民主主義の可能性、政治とはいかにあるべきかの根本論議まで熱のこもった真剣なやりとりが繰り広げられた。いくつか印象に残った出席者の言葉を紹介する。

シン氏:「韓国では最初100人から始まり9年かけて50万人になった。今日ここに集まっていただいた方が100名あまり、日本では5年で50万人になるのではないか」

ミン氏:「韓国はネットインフラが進んでいるからポスダックが成功したのだと訊かれることが多いが、若い世代の政治の変化に対する欲求があってこそだ」

パク氏:「孔氏の言葉で、国を運営するには軍隊と食料と信頼の3つが必要だが、最後まで残すべきは信頼である、というのがある。ネット上のやりとりであっても信頼が大事だ」

穂坂氏:「政治は面白くなくてはいけない。他人を評価するのは面白いし、ポスダックも面白いのではないか。地方は不満だらけだから、その不満をうまく汲み取れればいい」

菅氏:「私のもとに一日何通もメールがくる。その中には直筆の手紙ではありえないようなひどいのもある。政治家であるかぎり批判されるのは当然だが、匿名性の問題は検討すべきだろう」

 一方で、日本版ポスダックの立ち上げは資金面やシステム構築など多くの問題点を抱えている。当初9月1日からの稼動予定だったが、遅れているという。

 またコンセプトそのものについても、個人識別番号制度があって参加者を特定できる韓国に対し、日本はその仕組みがなく、そのまま輸入できるわけではない。参政権のない外国人が参加できてしまう点、一人の複数登録が可能になってしまう点などは解決しなければならない課題である。

 とはいえ、政治と証券市場を組み合わせる電子民主主義という概念は新鮮。ネット人口の多数を占める若い世代の政治参加を促す可能性のある仕組みとして、今後の発展に注目したい。
(2006年9月5日掲載)

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