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骨身を削って子育てをする妻 新米オトンの戸惑い育児奮闘記(4)



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 寒い日と暖かい日が交互に来る、季節の変わり目という時期を実感する今日このごろ。2月に生まれたわが子は順調に育っている。いただき物のベビーカーでのお出かけにも、最近はずいぶんと慣れてきたようだ。

 細かな心配事はしょっちゅうである。たとえばウンチ。1日1回程度に安定してきたと思ったら、なぜか毎回のおもらしでおむつを茶色に汚すようになった。便の感じがゆるく、下痢なのかもしれない。ただ、機嫌は悪くないし、熱もないようだ。

 原因はよく分からないが、赤ちゃんだけに気がかりである。次の週までこの状況が続いたら、医者に見てもらおうか。そんな話をしていたら、いつのまにか収まった。

 ちなみに(いまどきどこでもそうかもしれないが)、私たちの住んでいる自治体では、赤ちゃんの医療費は無料である。大人であれば下痢程度で病院になど行かないだろうし、なにより自分で体調を把握できる。だが、赤ん坊はしゃべれないから、大したことないのか、深刻なのか、その判断がつきかねる。そんなときに、医療費無料という制度は、経済的な補助になるのはもちろんのこと、気軽に専門家に相談できるという点でありがたい。

 しかし、今回代わりに病院に行く羽目になったのは、医療費有料の妻だった。実は結構以前から、彼女は手首の痛みを訴えていた。5キロになろうという子供を抱きかかえるたび、あるいは買い物などで重い荷物を持つたび、痛むのだという。

 整形外科の診察の結果は、少なからぬ衝撃だった。腱鞘(けんしょう)炎である。

 私は付き添ったわけではなく、レントゲンを見たわけでもないのだが、手首の骨が薄く透けるようになっていたらしい。妊娠中はカルシウムが不足する、歯が抜けてしまう場合もあると聞いたことはあったが、出産後も母乳に栄養分を吸い取られ、腕の骨にまで影響を及ぼしていたのだ。

「ここまで命削られるとは思わんかった」

 妻はあっけらかんと笑う。「骨身を削って」という慣用句があるが、まさにそのとおりだ。

 妊娠・出産が保険の対象外であることは周知のことである。しかし、産後の経過・診察を含めて、育児補助の対象としていただけると、さらにありがたいのだが。

 「煮干しを食え」という妻に、私も表面的には笑ったが、内心はびびっていた。骨が薄くなるって、いったいどういうことだ?!

 かくして今まで以上に力仕事は私の役目となった。とはいえ、最も大事な仕事であり、かつ手首に負担のかかる授乳だけは、私が代わってあげられないことである。

 そして、素知らぬ顔して、ますます息子は肥えていく。

 不安と喜びを抱えたまま、子育ては続く。
(2007年4月26日掲載)

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