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うんちとおしっこの波状攻撃〜妻不在の休日

新米オトンの戸惑い育児奮闘記(2)




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 早いもので我が子が生まれてから一ヵ月が経とうという頃、「今度の週末、母と出掛けてくるから、お世話よろしく」と妻から唐突に告げられた。

「あ、そう」特に反対するつもりはなかったが、同時に反論を許さない雰囲気もあった。朝から夕方まで、夫が一人で赤子の面倒を見られるか、それは今後の家庭生活を円満に進めるための試金石なのかもしれなかった。

 主に布おむつを使っていることもあり、赤ちゃんが生まれてから、我が家では洗濯が1日2回になっていた。その日、まず大人の衣類と赤ちゃんの服を洗って干し、次に漬け置きしていた多量のおむつ軍団を洗濯機に放り込んだところで、妻は「あとは任せた」と言って出ていった。時刻にして、午前9:30のことである。

 直前で授乳していたため、息子は比較的おとなしい。最初の私の仕事は、洗い終えたおむつの山をお天道様にさらすことだった。おもらしは一日に何度もするから、枚数はおよそ20枚近い。

 干している途中から、泣きが始まった。おしっこだろうか。そう思って恐る恐る開陳すると、それはもう見事な実弾だった。汚い話で恐縮だが、赤ちゃんのおもらしうんちには、おむつに染みが付く程度のちょびうんちの場合と、お尻から太腿までべったりの大放出の場合がある。今回は後者のべったりうんち。のっけからの先制攻撃である。

 明日は天気が悪いから、今日は紙おむつを使えとの妻からの指令。しかし、明日の洗濯の手間は省けるが、今日のおむつ交換の手間は変わらない。大量のべったりうんちを拭き取るのに苦労する。

 ただ幸いなのは、この時期の赤ちゃんのうんちは、まだそれほど臭くないということだ。生まれて初めてのうんちは濃緑色でねばっとした無臭だった。これは胎内にいたときに飲んだ羊水や栄養分のためらしい。ミルクを飲み始めると、その臭いは強烈に甘酸っぱくなった。赤ちゃんのうんちは甘酸っぱいのだ。

 前回、男の子はおっぱいが嫌いであるという記事を書いたが、その後我が子は上手に飲めるようになってきた。粉ミルクの割合が減り、母乳が増える。そのためか、うんちの質も変わってきた。甘さが控えめになり、色は黄土色、流動性が増して水っぽくなった。

 そんなうんち処理がようやく終わると、まもなく授乳の時間だ。残念ながら私の乳首からは何も生産されないため、ここは粉ミルクの助けを借りる。

 粉ミルクでは3時間ごとを目安にしていたのだが、母乳はそれに比べて飲みにくいため、一回当たりの授乳量が減り、逆に与える頻度が高くなる。粉ミルクを100mlくらいの多めに与えたほうが満腹になって寝てくれやすいかなと思いつつ、せっかく母乳のペースに慣れてくれたのを乱したくないので、迷いつつ控えめの60mlを調乳。やはり少ないのか、飲み終えてもぐずぐずと不満そうである。

 抱っこしていると泣き止むが、ベッドなり床なりに下ろすと泣く。泣くのは赤ちゃんにとって発声機能の運動の意味もあると聞いたことがあるが、生まれた当初に比べると、ずいぶんやかましい泣き声をあげるようになった。泣かれると何もできないので(もちろん多少は放っておいてもいいのだが)、腕に抱いてあやしながら、新聞を読んだり、パソコンを立ち上げて、オーマイニュース連載中の旅行記に使う写真をスキャニングしたり。

 寝たかなと思って布団に下ろすと、すぐに目をぱっちりして「ぎゃー」とやる。おむつを見ると濡れているので交換する。ややあってまたミルクを与える。

 13:00、合間を縫って自分も昼食とする。「泣くな、今は泣くな」「俺にも飯くらい食わせてくれ〜」

 14:00、電話が鳴った。妻ではなく、学生時代の友人である。やはりまもなく初めての子供が生まれる予定だという。「生まれたときに比べると、900グラムくらい重くなったからね。腰が痛いよ」たった数か月の差だが、出産と育児についてあれこれ講釈を垂れている自分がおかしい。再び息子がぐずり始めたところで電話終了。

 さらに一度のミルクと何度かのおむつ替えを経て16:00、静かになった我が子と、大人布団で一緒に横になっていたら、いつのまにか眠ってしまっていた。

 そんな束の間の平和休戦を打ち破ったのは、他ならぬ妻からの電話。「今駅に着いた」

 時計を見ると17:15。私が起こされたのはいいとして、厄介なのはおもらし将軍も目覚めてしまったことだ。妻の帰宅を前に最後の戦いが始まった。大事なところを拭き拭きし、汚れおむつを廃棄し、さあ新しいおむつを投入しようというところで、油断してしまった。

 ぴゅーっ。

 推定飛距離30cm。布団も、慌ててかざした私の手も水浸しである。当の本人は、自分の服も濡れているのにしたり顔。そして着替えの肌着は、まだ物干しで風に吹かれていた。

 とりあえず我が息子は全裸の刑。私は洗濯物を取り込みに走る。哀れな敗戦処理であった。

 ほどなく妻がニコニコと帰ってきた。「わっ! なんでこいつ“まっぱ”なん?」
(2007年3月19日掲載)

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