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アメリカは本当にイランを攻撃するのか 独自の外交関係を築いてきた日本の仲介を



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 緊迫した中東情勢が続いている。イラク国内のテロ事件は日常茶飯事であり、3日も首都バグダッドの市場で100人以上が犠牲となる事件があった。もはや内戦状態であるともいわれ、悼ましい限りであるが、さらに気になるのは、戦火がイラクから隣国イランに飛び火するのではないかという懸念である。

 まず、イラク国内で頻発するテロや、武装集団による対立相手の殺害や誘拐といった事件について、アメリカとイランの代理戦争ではないかと指摘する見方がある。

「イラクのマリキ首相は31日に放映された米CNNテレビのインタビューで、米国とイランがイラクを舞台に対立する事態に嫌悪感を示した。また、イラクが両国の争いに巻き込まれることを放置しないと言明した。(中略)同首相は、『問題をイラク国外で解決するようお願いする。米軍がイラクをイランやシリアを攻撃するために使うことを望んでおらず、また、イランが米軍を攻撃するためにイラクの領土を使うことも認めない』と強調した」(AFP=時事)

 このニュースからさかのぼること5日前、ブッシュ大統領が駐イラク米軍に対し、イラク国内で活動するイラン人工作員の殺害許可を出していたと、各マスコミが報じている。

「26日付の米紙ワシントン・ポストは米政府当局者の話として、ブッシュ大統領が昨年秋、中東全域で強まるイランの影響力を弱めるため、イラク国内で活動するイラン人工作員を攻撃し、拘束または殺害する許可をイラク駐留米軍に与えたと報じた。(中略)軍はこれまで、イラン人工作員を3、4日間拘束してもDNAや指紋の採取や写真を撮るだけで釈放していた。米国務省などは、イラン人工作員が米軍に殺害されれば、イラン政府が硬化し、米国とイランの軍事的緊張が高まるとの懸念を強めている」(共同)

 これはアメリカがイランに対して発した大きな挑発であり警告であるといえるが、一方のイランは数日後、次のような反応を示している。

「イランのカゼミコミ駐イラク大使は、28日に行われた米ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、イランがイラクとの軍事・経済関係を大幅に拡大するための準備を進めていることを明らかにした。同大使は、イランがイラク軍に対し『治安上の戦い』のための軍事訓練、装備および顧問を提供する準備があると述べた。また、イラク復興のための大きな役割を果たす準備が整っていると語った」(ロイター)

 イラクから手を引くことはない、というイランの意志を表明したものといえるが、これに対してブッシュ大統領も強硬姿勢を示している。

「ブッシュ米大統領は29日、イランがイラク駐留米軍に対する武装勢力の攻撃支援をエスカレートさせれば『断固として対処する』と述べ、これまでにない強い表現でイランに警告した。米公共ラジオ(NPR)とのインタビューで語った」(共同)

 このような双方の動きを追っていくと、まさにイラク情勢を巡って、アメリカとイランが一触即発の状態であるかのような印象を受ける。

 そんな情勢の中、フランスのシラク大統領が、イランの核保有を認めるような発言を行い、大きく物議を醸している。

「1日付の米紙ニューヨーク・タイムズによると、フランスのシラク大統領は同紙など3つのメディアのインタビューで、イランの核保有が『それほど危険ではない』と発言、その翌日にあわてて撤回した。イランの核保有容認とも受け取れる当初の発言は仏政府の公式の立場と異なるもので、波紋を広げそうだ」(読売新聞)

 イランと断交状態にあるアメリカに対し、フランスはイランとの関係が深い。イスラム革命を指導した故ホメイニ師はフランスに亡命していた経歴があるし、対イランの貿易額や援助額において、フランスは上位に位置している。イラク戦争にも反対しアメリカと対立したフランスであるが、シラク発言は、あるいはアメリカに対し、イランと戦争をしてくれるなというけん制の意味合いもあったのかもしれない。

 また、イランの隣国パキスタンのアジズ首相は、訪問先のブリュッセルにおいて、「イランが平和目的のために核技術を開発する権利をもつと信じている」(イラン・エッテラート紙)と述べたとされている。

 ここで注目されるのは、日本政府の対応である。昨年末の国連安保理の決議に関連しては、「イランの核問題を巡る現状を強く懸念している」との麻生外務大臣の談話が発表されているが、北朝鮮の核開発に対する強硬姿勢と比べると、ことイランの問題については、適当な反応でお茶を濁そうとしているような印象がある。

 日本はフランスと同様に、イランとの関係が非常に深い国である。政治的には良好な状態を続けており、経済的にも原油輸入の13.8パーセントを依存するなど結びつきは強い。戦後アメリカに従った外交政策ばかり展開してきた日本であるが、およそイランとの関係については、例外的にアメリカに逆らった独自の友好関係を築いているのである。

 アメリカとイランの緊迫した情勢については、これを止めようとする動きもある。

「イランのラリジャニ最高安全保障委員会事務局長は28日、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長が提案した『イランのウラン濃縮活動』と『国連の制裁論議』を同時に中止するとの包括案について、検討の余地があるとの姿勢を示した。イラン国内では強硬派のアフマディネジャド大統領の外交姿勢に穏健保守派からも危惧する声が出ている」(産経新聞)

「ゲーツ米国防長官は2日の記者会見で、イラン攻撃の可能性について『(ブッシュ)大統領も(ライス)国務長官も私も明確にしている通り、イランに対して戦争をする計画はない。核問題での外交的プロセスは機能しており、それに期待している』と述べ、外交的な解決を目指す米政府の方針を強調した」(毎日新聞)

 もしアメリカがイランの核施設を空爆するなど、戦争が始まってしまった場合、イラク戦争をはるかに凌ぐ犠牲が予想される。下手をすれば、周辺諸国を巻き込んだ大戦争に発展する可能性もある。

 この予断を許さない状況について、日本政府もマスコミも、多くを語ろうとしないが、私は日本が果たせる役割は決して小さくないと思っている。

 先日久間防衛大臣がイラク戦争を批判したという記事を書いたが、3日には麻生外務大臣が京都市内で講演し、「アメリカのイラク戦後処理は幼稚だ」と発言している。現役閣僚が相次いで発した、非常に興味深いアメリカ批判の流れである。

 シラク大統領のような問題発言ではなく、日本がより建設的な立場でアメリカを制止し、イランとの仲介役を担えるのではないか。そんな淡い期待が沸々と浮かんでくるのだが、これは無理な注文だろうか。
(2007年2月7日掲載)


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